教育が、病院の未来をつくる。- 地域医療を支える人材を育む、京都岡本記念病院の挑戦 -

京都岡本記念病院スキルアップセンター

社会医療法人 岡本病院( 財団) は、2025 年4 月にスキルアップセンターを開設した。
法人内の伏見岡本病院を閉じて、久御山町の京都岡本記念病院の隣に新たにくみやま岡本病院を開院するのを機に、2023 年に、法人全体の学びの場してスキルアップセンター構想が持ち上がり、そこからわずか2 年弱のスピードで開設へとこぎつけた。
「 教育に力を注ぎ、自己研鑽に努める」という方針のもと、法人内スタッフはもちろん、地域の医療・介護従事者、さらには復職を検討する潜在看護師のトレーニングも受け入れる、まさに“ 地域に開かれた” スキルアップセンターだ。
今回は、スキルアップセンター長をはじめ、開設と運営を支えてきた立役者の方々に話を伺った。
スピード開設の舞台裏、そしてスタッフ一人ひとりの知恵と力を結集してつくり上げた、センター運営の工夫とノウハウを紹介する。

目次

  • スキルアップセンター設立までの経緯
  • スキルアップセンターの特徴
  • 明日から真似したい アイデア集

スキルアップセンター設立までの経緯

スキルアップセンター センター長
福田 賢一郎 先生

『シミュレータを買いたい』から始まったプロジェクトでした

現在のスキルアップセンターは、最初から大規模な教育拠点として計画されていたわけではありません。
「最初はシミュレータを買うだけのつもりだったんです。」
センター長は当時をそう振り返ります。
しかし、伏見岡本病院の閉院とくみやま岡本病院の開設、教育体制の統合計画や施設環境の変化など、さまざまな出来事が重なったことで、構想は次第に広がり、やがて法人全体を巻き込む大きなプロジェクトへと発展していきました。

01.現場の声が出発点に
2023 年頃の、京都岡本記念病院 シミュレーションセンターは、シミュレータは備えられていたものの、資材置き場のような状態で、十分に活用されているとは言えませんでした。一方、現場からは「研修で活用したい」「機器が古く使いづらい」「外科用シミュレータも導入してほしい」といった声が寄せられていました。
02.思いがけない転機
電子カルテのクラウド化が急速に進んだことで、当初サーバールームとして計画されていた部屋が不要となりました。そこで、このスペースを教育環境の整備に活用することとなり、当初予定していたシミュレータの購入計画は、教育拠点そのものを整備する大規模なプロジェクトへと発展しました。
03.施設見学や勉強会への参加
法人全体のシミュレーションセンターを計画するにあたり、先行事例を学ぶため、センター運営に携わる方々が全国から集まるセミナーへ参加し情報収集を行いました。また、他施設の見学にも何度も行き、苦労話も含め、起ち上げや運営のノウハウを教えていただきました。色々な方の話を聞けたことが、とても役に立ちました。
04.各診療科との話し合い
各診療科を訪問し、必要なシミュレータや活用方法について丁寧にヒアリングを実施しました。シミュレータは決して安価ではないため、費用対効果を慎重に検討。高機能なシミュレータを導入するか、同じ予算で低価格なシミュレータを複数台導入し、多くの職員が利用できる環境を整えるかなど、教育効果を見据えながら議論を重ねました。
 

Q: 開設から1年経過し見えてきた課題は?

青山課長

A: 京都岡本記念病院では、研修医は4 月から夜勤が始まり、早い段階で救急対応が求められるため、入職直後からスキルアップセンターを活用したトレーニングが教育の流れに自然と組み込まれています。一方、他の職種では、OJTの比率が高く、忙しい日常業務の中で足が遠のきがちな現状もあります。近年では、センターを積極的に活用して研修を行う指導者も増えてきましたが、開設から1 年間の利用状況を振り返ると、センターの活用は目標レベルには達していないと感じています。より気軽に利用できる仕組みづくりや、学びの機会を増やしていきたいと考えています。

スキルアップセンターの特徴

学びを支える環境づくり

目的別にシミュレータを配置したトレーニングスペースに加え、教材・機材を効率よく管理できる整理された保管庫を整備。
さらに、研修内容に応じて活用できる広い研修スペースや、特定行為研修などでe ラーニングによる自己学習ができるスペースも備え、学びを後押しする環境づくりに力を注いでいる。

シミュレータの常設
多様なシミュレータを常設することで、必要なときにいつでもトレーニングが行える環境を整備。日常的な教育・研修の充実はもちろん、病院の“ 顔” として、急な来客や見学にも柔軟に対応できる施設としての役割も担っています。

旧病院の備品活用
パーティションや棚、ドレッシング材に至るまで、旧病院で不要となった備品を無駄なく活用。管理を担当する青山課長が、自ら車を走らせて備品を運び込み、センターを整備した。また、古くなった機材類は臨床工学部が一つひとつ点検・メンテナンスを実施。
スタッフが安心して使用できる環境づくりにも力を注いでいます。

①看護ケアトレーニング

経管栄養シミュレータや万能型看護実習モデル" 八重" などを備え、基礎から実践まで幅広い看護ケアを学ぶエリア。

②医学・外科系トレーニング

大腸内視鏡モデルやCVC シミュレータ、腹部超音波モデル「ABDFAN」などを備え、医学・外科系手技のタスクトレーニングを行うエリア。

③倉庫

BLS をはじめ、研修内容に応じて必要な教材や機材をすぐに取り出せるよう、スキルアップセンターに直結した倉庫を配置。効率的な研修運営を支えています。

今後の展望

「学び続けられる環境を提供し 地域医療へ貢献していきたい」

 京都岡本記念病院は“ 急性期医療”、くみやま岡本病院は回復期から在宅までを担っています。そのため、当法人は急性期から慢性期まで、さまざまな医療ニーズに応える役割があります。そうした組織としてさらに発展していくために、最も重要なのは「教育」だと考えています。前述のり、当初は、研修医に外科の魅力を伝え興味を持ってもらうという狙いから、外科系のシミュレータを購入する計画から始まりました。しかし今後は、医師だけでなく看護師やコメディカルを含めたすべての医療職に学びの機会を提供し、人が集まり、人が育つ―そんな好循環を生み出していきたいと考えています。

知恵と工夫が盛りだくさん
明日から真似したいアイデア集

機転の効いたアイディアが キラリと光る。開設1 年とは思えない、現場目線の工夫が満載!

バーコード読み取り

出退管理システム

医療情報部が開発した出退管理システム。職員に付与されているIDカードを読み取ることで、誰が・いつ施設を利用したかを記録できます。利用状況は定期的に分析し、センターの運営や改善に役立てています。

バーコード読み取り

インシデント情報の活用

医療安全管理室から配信されるインシデント事例は、関連するシミュレータでの研修に迅速に反映しています。臨床現場の事例をもとに学ぶことで、より実践的な教育につなげ、安全意識の向上を図っています。

構成品の一覧表

シミュレータ構成品一覧

臨床工学部が作成した構成品一覧。写真と部品名を掲載しているため、研修前の準備や後片付けを効率化できるほか、消耗品の発注や在庫管理にも役立っています。管理者システムでは、価格や発注先まで見れるようにしています。

アルコール消毒液

感染対策の意識づけ

センター入口には手指消毒液を設置。技術の習得だけでなく、医療者として求められる基本的な感染対策を自然と身に付けてもらいたいという思いから設置しました。

 

取材ご協力

(写真左から)
青山 芽久様:スキルアップセンター課長 / 教育研修センター課長
福田 賢一郎様:スキルアップセンター長 / 副院長
中川 麻衣子様:スキルアップセンター事務
岡崎 哲也様:京都岡本記念病院 臨床工学部部長

Special Thanks
髙田 裕様:法人事業部事務長

施設紹介

社会医療法人 岡本病院(財団)
京都岡本記念病院スキルアップセンター
〒613-0034 京都府久世郡久御山町佐山西ノ口100 番地

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